ピーピースルーはプロ御用達の排水パイプ専用の薬剤です。トイレ、キッチン、お風呂、洗面台のつまりを除去するときに役に立ちます。ここではそんなピーピースルーシリーズの概要、使い方、注意点などをプロの視点で解説します。ぜひ参考にしてください。
ピーピースルーシリーズの基礎知識
まずピーピースルーについての基本的な知識を押さえましょう。特に効果が得られやすい場合と、そうでない場合の考え方、そして5種類あるピーピースルーの特徴を押さえ、最適な種類を選べるようにしましょう。
ピーピースルーシリーズとは
ピーピースルーシリーズは和協産業株式会社が販売している業務用のパイプ洗浄剤です。和協産業株式会社はプロが尿石落としに使う「デオライトシリーズ」の販売元でもあり、水道業者にとって末永く営業を続けていただきたい企業様の一社です。
ピーピースルーの特徴と効果
ピーピースルーが効果を発揮するのは、油や有機物です。和協産業株式会社の公式サイト内で、以下のように効果、特徴が説明されています。
汚れたり詰まった状態の排水管の内容物を分析してみますと、油脂分と有機物がほとんど占めており、この付着物に細菌、真菌、原虫などの微生物が増殖し、発酵することにより悪臭が発生します。そしてこの付着物は細菌の増殖にともなって細菌が分泌した粘液でできるスライムとともに灰黒色の軟泥状の皮膜に成長し、不快なだけでなく極めて非衛生的なものです。
ピーピースルーおよびピーピースルーKはこの悪臭のもとである細菌スライムを完全に溶解除去すると同時に、これらの微生物を死滅させ、除菌と消毒・洗浄を行います。
この特徴から分かるように、ピーピースルーが効果を発揮するのは、以下のようなケースと分かります。
- トイレにトイレットペーパーを流しすぎたとき
- トイレに汚物を流しすぎたとき
- 洗面台やお風呂の排水管に汚れ、髪の毛などが堆積したとき
- キッチンに油、汚れが堆積したとき
逆に、以下のようなケースでは効果を発揮しづらいことが分かります。
- 固形物(プラスチックとか鉄とかガラスとかの落下物)が原因のつまり
- 固形物以外であっても、水の流れが完全にふさがれているとき
つまり、薬剤の力で脂分や有機物を分解することによってつまりや流れの悪さの原因を除去するため、薬剤が溶かせないものには効きません。また、薬剤が浸透せずつまりの原因に届かない場合にも効果を発揮できない可能性があります。
ピーピースルーの種類
ピーピースルーは用途によって、5種類ラインナップされています。業務用とはいえホームセンターで購入することのできる「ピーピースルーK」「ピーピースカット」などがある一方で、医薬用外劇物指定されている「ピーピースルーK」のような取り扱いに細心の注意が必要な劇薬もあります。それぞれの特徴をみていきましょう。
ピーピースルーK
インターネット上で劇的な効果がある薬剤としてよく紹介されているのは、この「ピーピースルーK」です。また、つまりや水漏れの緊急対応を専門とした水道業者が常備していることが多いのもこの「ピーピースルーK」です。この「ピーピースルーK」と「ピーピースルー温水用」は医薬用外劇物に指定されているため、使用時には細心の注意が必要です。一般家庭で素人の方が使うことは全くおすすめできません。
「ピーピースルーK」は排水管のつまり(管内の付着汚染物)を化学反応の力によって速やかに溶かして流れを解消する、特殊な業務用の洗浄剤です。
また、排水管内部に繁殖している細菌類の除菌も行いますので、排水口からのいやなにおいもなくなり、衛生的な効果を発揮します。排水管のつまりや流れが悪かったり、悪臭が発生している場合にご使用ください。
ワイヤーなどによる物理的な除去では不可能な油脂分や有機物の汚れに対して効果的に作用します。
ピーピースルー温水用
洗浄力は「ピーピースルーK」と同等であり、同様に医薬用劇物に指定されています。「ピーピースルーK」と同じく、使用時には細心の注意が必要です。温水が用意できる場合にはこの「ピーピースルー温水用」を使うとよいでしょう。「ピーピースルーK」は冷水を注いで発熱するように設計されているため、用法・用量を誤ると事故につながります。発熱させる役割を持たせていない分、「ピーピースルーK」よりは若干おとなしい薬剤といえるかもしれませんが、劇物に変わりはありません。一般家庭で素人の方が使うことは全くおすすめできません。
「ピーピースルー」は「ピーピースルーK」と同等の洗浄力を有する、当社が創業以来販売しているベストセラーの業務用洗浄剤です。「ピーピースルーK」は温水の用意できない場合や水温が低い寒冷地の常温水(冷水)に溶解させるのに対して、この「ピーピースルー」は約40℃の温水で溶解反応させてご使用ください。排水の流れがスムーズになると同時にいやな悪臭もなくなって、とても衛生的です。
ピーピーエル(液状)
ピーピーエルは使用時の発熱性がないという点が特徴で、医薬用外劇物に指定されています。一般家庭で活躍するシーンはあまり想像できませんし、劇物ですので素人の方が家庭で使うのはおすすめできません。排水管が長く、大量に薬剤を送り込んで全体をメンテナンスする場合に使う趣旨の薬剤です。プロ用途と考えてよいでしょう。
長い経路の排水横管や屈曲管深部に薬剤を一定濃度で作用させるのは非常に難しいことです。「ピーピーエル」は排水管にまんべんなくゆきわたり、強い浸透力と粘性をもつ業務用の洗浄剤です。
液状タイプの洗浄剤ですので、ピーピースルーのような反応時に高温度の発熱性がなく、硬質塩化ビニル管を使用している排水管を変質、変形させることはありません。
ピーピースルーF
ピーピースルーFは、ホームセンターでも購入できるパイプ洗浄剤です。医薬用外劇物に指定されておらず、一般家庭での使用に最適です。説明書きにもあるように、トイレへの使用には適していません。尿石にも効果はありません。キッチン、お風呂、洗面所のつまり、悪臭の予防のために使うのがよいでしょう。
強力な発泡と発熱作用により流し場、浴場、洗面所などの排水管の内部に付着した汚れを取り除く、業務用のパイプクリーナーです。医薬用外劇物にも指定されない、環境への影響にも配慮した製品です。大便器・小便器などトイレへの使用には適してしておりません。
ピーピースカット
ピーピースカットは医薬用外劇物に指定されておらず、ホームセンターで気軽に購入できる液状の排水パイプ洗浄剤です。ピーピースルーFと同様、キッチン、お風呂、洗面台の排水管に定期的に投入してつまりや悪臭を予防するのに適した薬剤です。ごくごく一般的なパイプクリーナーであり、一般家庭においてはピーピースルーFかこのピーピースカットの使用をおすすめします。医薬用外劇物に指定されていないとはいえ、目に入ったりすると危険です。強い薬品であることを念頭に、十分注意して使いましょう。
流し場、浴場、洗面所などの排水管の詰まり・悪臭を予防する、液状のパイプクリーナーです。日常の定期的な使用によって排水管のトラブルを未然に防ぐと同時に除菌・消臭効果も備え、大変衛生的です。粘性をアップさせて汚れに対する付着力がよくなり、効果的に作用します。 医薬用外劇物にも指定されない、環境への影響にも配慮した製品です。防錆剤配合。大便器・小便器などトイレへの使用には適してしておりません。
ピーピースルーKの使い方
ここでは、基本的に一般家庭での使用はおすすめしていないピーピースルーKの使い方について解説します。一般家庭での使用をおすすめしていない「ピーピースルーK」の使用方法をあえて解説するのは、素人の方でも楽天などの通販で買おうと思ったら買えてしまうためです。注意喚起の意味も込めて、ピーピースルーKの使用時の注意点を中心に使い方を解説します。
使用時の注意点
ピーピースルーKについてはいくら注意しても注意しすぎることはない、という薬剤です。使用時には必ず下記のポイントを徹底します。
十分に換気する
一度使えばよくわかりますが、ピーピースルーKは使用時に強烈なにおいを発生させます。開けられる窓は全て開け、できれば玄関の扉も開け放した状態で使い始めることです。換気扇も回した方がよいです。容器の注意書きにも「呼吸器系臓器の障害」と注意喚起されています。換気のできない事情があったり、幼児や呼吸器系の弱い方が同室内にいるような場合には使わない方がよいです。
素手で作業しない
基本中の基本ですが、必ずゴム手袋をはめます。素手や皮膚につくと、皮膚が溶かされるためです。高温になるため火傷の危険性もあります。
皮膚を露出させない
手以外にも、素肌をなるべく露出させないようにします。まず、防護メガネをかけます。また帽子をかぶりましょう。マスクをして顔の肌がなるべく隠れるようにします。
容器には以下のように記載されています。
作業時はゴム手袋や保護眼鏡、マスクを着用し、薬剤が目や皮膚に付着しないように充分注意してください
万一ヒフに付いたり目や口に入った場合は、すぐ水で充分に洗い流し、医師の手当てを受けてください
お湯を使わない
ピーピースルーKは、もともと冷水を使用することを想定しているため、水分と反応して発熱します。お湯を注ぐと急激に反応が進み、高温になりすぎる可能性があります。容器には下記のように記載されています。
湯をそそぎますと急に反応して危険ですから、絶対に使用しないでください
配管の素材を確認する
ピーピースルーKは、水分と反応して発熱します。その熱を使って薬剤の効果を高める、という仕組みです。しかし配管の種類によって熱に弱いタイプもあります。具体的には、塩ビ製トラップや、ジャバラ管です。熱で変形する可能性があるため、予め別の容器で溶かしてから配管にそそぐ、という手順を踏みます。容器には下記のように記載されています。
塩ビ管トラップやジャバラ管は反応熱で変形することがありますので、使用方法②を参照してください
ここでいう使用方法②とは、あらかじめ1リットルの水にピーピースルーKを250gを入れかき混ぜて溶かした上で排水口に注ぐ、という方法のことです。
量を間違えない
用量が少ないとつまりに効きません。多すぎると配管が溶ける可能性があります。
アルミ製品は腐食するため取り除く
もしもまわりにアルミ製品がある場合には、あらかじめ避けておきましょう。どかせないものであれば養生をしておきましょう。
ピーピースルーKの使い方(トイレ編)
ここではトイレのつまりにピーピースルーKを使う場合を例に、具体的な手順を解説します。
換気する
窓を開け、換気扇を回し、できれば玄関の扉も開けます。
水たまりの処置
水たまりの中に汚物、汚水がたまっている場合は取り除きます。灯油ストーブ用ポンプなどを使うこともありますが、紙コップですくい出して重ねて補強したビニール袋に移していく方が後処理が楽かもしれません。
薬剤を入れ、水をそそぐ
水たまりに粒状のピーピースルーKを撒きます。その上で水を注ぎます。ピーピースルーKはお湯を使いません。プロが効果を上げるためにお湯を使っている場面を目撃することもあるかもしれませんが、絶対に真似してはいけません。急激な熱反応が起こり、上がった蒸気を吸い込んだり浴びたりしたら大変なことです。
より安全な方法であれば、耐熱性の容器を使って薬剤を水で溶かして、水溶液状にした上でトイレの水たまりに注ぐ手順でもよいでしょう。
しばらく放置する
症状によって必要な時間は異なりますが、目安としてまずは1時間程度置きます。1時間経ったらぬるめのお湯バケツ1杯~2杯流し込んでみます。ゆっくり入れるのがポイントです。注いだ分が排水管側に流れたことが確認できたら、一気に流し込んでみます。長時間放置しすぎると配管が溶ける可能性があるため注意しましょう。
ピーピースルーの保管方法
密栓し、こどもの手の届かないところで鍵をかけて保管しましょう。暑くなるところに置かないようにします。硬くふたを閉めた上で、ビニール袋に入れて強く口を縛って保管するくらい厳重に密閉して保管した方が安心です。
まとめ
ピーピースルーに関して一通り解説しました。使い方についてはトイレのつまりで使うケースを想定し、手順を解説しました。ピーピースルーKについては特に効果はありますが、医薬用外劇物に指定されている劇薬であることを絶対に忘れてはいけません。プロが正しく使うと本当に強力な薬剤ではあります。これからピーピースルーKを購入しようと検討している方、購入してこれから使おうとしていた方は特に事前の準備や使用上の注意点の部分を参考にしていただき、事故のないようにしてください。