プロが教える台所の排水詰まりの直し方

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台所の排水トラブルは、熟練の水道業者ですら復旧作業に手間取ることが多々あります。台所は毎日使う上、水に限らず様々なものが流されます。時間の経過とともに積もり積もって、ある日「台所の床から漏水してきた」「突然シンクに水がたまって流れなくなった」など、排水トラブルが発生します。

ここでは台所の排水に関する基礎知識から、排水詰まりの直し方、排水口にモノを落下させてつまらせた場合の対処法、台所排水をつまらせないための予防策などを詳細に解説しています。ぜひ参考にしてください。

台所の排水トラブルにまつわる基礎知識

排水管トラブルの典型例

台所の排水管トラブルで代表的な例は、おおよそ次の4つのパターンに集約されます。

  • 台所の排水の流れが悪い
  • 台所の排水管がつまった
  • 台所の排水口に食べ物の固まりや清掃用具を落とした
  • 台所の排水口から異臭がする

これらのトラブルに対処するにあたって、まずは台所の排水口の構造と、シンク下の排水パイプの種類を押さえておく必要があります。

台所の排水口の構造

まずは台所の排水口の仕組みを理解しましょう。排水口フタ、菊割れフタ、バスケットを取ってみましょう。すると、お椀のような形をしたプラスチックがついています。これをはずすと、突き出た排水管のまわりにドーナツ状態に水がたまっているのがわかります。これは、悪臭や害虫の侵入を防ぐためのトラップで、椀トラップと呼びます。椀トラップには、排水バスケットがプラスチックで、その下の部分が椀の働きを兼用しているタイプもあります。また、中にはトラップのないものもあります。

台所の排水パイプの種類

シンクの排水パイプには、蛇腹排水ホースと塩ビ排水パイプがあります。どちらかによって、排水が詰まった場合の作業が異なるので、まずはシンクの下をのぞいて、チェックしてみましょう。

排水パイプには、蛇腹排水ホースと塩ビ排水パイプがあります。一戸建て住宅ではほとんどの場合、蛇腹ホースが使われています。蛇腹排水ホースは、ホースの先が床面に突き出ている排水管に差し込まれています。これが何かの拍子で外れると、排水が床にもれて水浸しになってしまいます。そこで、集合住宅には、水漏れを起こした場合にも階下の被害が少なくて済むよう、排水管ときっちり接続されているまっすぐな塩ビ排水パイプが使われています。また、最近は、洗面所と同じようなS字トラップで、掃除口がついたタイプの排水パイプもあります。

台所の排水詰まりの原因

台所の排水管の詰まりは何によって引き起こされるのでしょうか。長年にわたって油や食べかす、汚水によるヘドロ状の物などが堆積することによって起こることがほとんどです。また排水管の奥がどのようになっていて、何がどのようにつまっているか分からないものです。ここでは台所のつまりでもっとも頻発する4つのケースを詳細に解説します。ぜひ参考にしてください。

台所の排水詰まりの直し方

台所の排水管トラブルの対処法を、ご紹介した典型例ごとに解説します。台所は日常的に排水量も多く、水以外のモノを最も流す場所です。「ちょっと流れが悪いだけだからすぐ直るかな」と思っていたら、思いのほか重症だったということがよくあります。重症なつまりは、プロ用の1台数十万円もするような機材を腕のいい現場作業員が使いこなしてようやく解消できる、というレベルのトラブルです。ここでご紹介するような、家庭で、素人でもできる作業を一通り試して改善しない場合は、多少のコストは覚悟の上プロに依頼した方がよいでしょう。

台所の排水の流れが悪い

台所の排水の流れの悪さを感じるようになったら、排水管が詰まりを起こす前の合図と考えましょう。完全な排水詰まりを起こす前に手を打ちましょう。

排水口の部品の汚れを取る

まずは排水口の部品を全て外し、排水パイプが見える状態にします。この状態で水を流してスムーズに流れていくようであれば、外した排水口の部品が原因です。外した排水口フタ、菊割れフタ、バスケット、プラスチックの椀などをよく清掃した上で元に戻せば作業完了です。

市販の薬剤を使う

排水口の部品が原因ではなかった場合は、排水ホースや排水パイプ、排水管のどこかがつまりかけています。60℃程度のお湯と市販の薬剤を排水口に流しましょう。軽度のつまりであればお湯と薬剤を投入することで排水の流れの悪さは解消します。この作業で直らないようであれば、専門の道具が必要になります。

ラバーカップ・ワイヤーブラシを使う

ラバーカップを使って作業する時のコツは、シンクに水を張った状態で圧力をかけることです。空気だけでガバガバ押したり引いたりしてもシンクとラバーカップの隙間から空気が漏れるため、かかる圧力が弱くなります。水を張ることで密封された状態を作り、ラバーカップを押したり引いたりすることで効果は高くなります。

台所の排水パイプ・排水管がつまった

台所の排水パイプ・排水管がつまった場合、何が原因かを順に確認していく必要があります。シンク下と床下の排水管を接続する方法は大きく2種類、蛇腹ホースと排水パイプがあります。どちらで接続されているかで作業が変わりますので、それぞれの場合に分けて解説します。

蛇腹ホースの場合

蛇腹ホースの構造とトラブルの特徴

蛇腹ホースは排水管より細く、床下付近で排水管に差し込まれているだけのことがほとんどで、排水管と蛇腹ホースの間には隙間があります。したがって、蛇腹ホースの場合は排水管内でつまりが発生すると、蛇腹ホースと排水管の間の隙間から水があふれ、床が水浸しになります。蛇腹ホース内でのつまりの場合は、蛇腹ホースより上に水がたまっていくため、シンクが水であふれることになります。

ただし、蛇腹ホースでも排水管との接合部分をテープや充てん剤を使って隙間を埋めていることもあり、接合部分が隙間なく強固に止水してあれば、排水管内のつまりでも蛇腹ホース内でのつまりでも、床に水があふれることなく、シンクに水があふれてきます。

蛇腹ホース内でつまった場合の対処法

まずはシンクと蛇腹ホース内の水を抜くことから始めます。少しずつでも水が減っていく状態であれば、水が抜けきるまで待ってから作業しましょう。

シンクと蛇腹ホース内から水が抜けきったら、防臭キャップや排水プレートを外し、蛇腹ホースを持ち上げて排水管から抜きます。このときホースの中から汚水などが落ちることがあるので、あらかじめ新聞紙やビニールを床に敷いて、蛇腹ホースの先を入れておくバケツや洗面器などを用意しておきましょう。

抜いた蛇腹ホースの先をバケツや洗面器に入れた状態で、シンクの排水口から水を流してみましょう。水がスムーズに流れない場合は蛇腹ホース内でつまっていることがわかります。水がスムーズに流れる場合は、排水管内でつまっていることがわかります。

蛇腹ホース内でつまっている場合、蛇腹ホースをはずして内部のつまりの原因を取り除きましょう。蛇腹ホースは反時計回りにまわせば外すことができます。蛇腹ホースを外したら蛇腹ホース内の状態を確認してヘドロような汚れがあれば割り箸や棒のような物を使い取り除きましょう。また白い塊が蛇腹ホース内にこびりついていたらそれは油の塊ですので取り除きましょう。

※蛇腹ホースとシンク下の接合部分が外せない場合、ワイヤーなどを使ってつまりの原因を取り除きましょう。

※蛇腹ホース内や、排水管の入り口部分にヘドロ状態の汚れや油の塊がある場合は、作業の結果一時的に排水の流れが改善しても根本的な解決には至っておらず、近いうちにまたつまりを起こす可能性が高くなります。排水管は何メートルもあり、建物の外まで続いていますが、蛇腹ホース内に白いラード状の油汚れが固着している場合、その先に続いている排水管内も同じような頑固な汚れが大量に堆積していることがほとんどです。排水管の奥の頑固な汚れを一般家庭用の清掃用具で綺麗に取り除くことは非常に難しいのです。つまりを除去する専用の道具を駆使する水道業者ですら、排水管内の頑固な汚れの除去を断念し、排水管の交換工事が必要と判断することさえあります。よって、ヘドロ状の汚れや白いラード状の油汚れが固着している場合は、腕のいい水道業者への相談をおすすめします。

排水管でつまった場合の対処法

床が水浸しになっている場合は、排水管でつまりが発生しています。排水管でつまっている場合は、排水管の入り口から直接ワイヤーを入れてつまりの原因を除去します。シンク下の排水管の口からワイヤーを入れても効果が出なかった場合は、戸建て住宅であれば屋外の排水マスからワイヤーを入れて同じようにつまりの原因箇所を刺激します。つまりの原因が除去できたら作業は完了ですので蛇腹ホースを元に戻しましょう。つまりが抜けなかった場合は、水道業者に相談することをおすすめします。

排水パイプの場合

排水パイプの構造とトラブルの特徴

排水パイプは排水管に向かって真っ直ぐ伸び、排水管と隙間なく強固に接続されています。よって、排水管内でつまりが発生しても、排水パイプ内でつまりが発生しても、床に水があふれることなくシンクに水がたまります。

排水パイプでつまった場合の対処法

排水パイプで排水管と接続されている場合は、圧力が逃げないためホームセンターで手軽に手に入るラバーカップや真空式パイプクリーナーを使うことができます。排水口まわりのパーツを全て取り外し、シンクに水を張った状態でラバーカップや真空式パイプクリーナーを使って圧力をかけましょう。

※なお、ツーシンクタイプの場合メインのシンクで圧力をかけたときに、サイドシンク側の排水口やオーバーフローから水が空気が抜けたり、水が噴き出したりします。ラバーカップや真空式パイプクリーナーを使う効果が落ちるため、空気や水が抜ける穴にはテープを貼るなどしてから作業しましょう。

薬剤・重曹・お湯の併用と効果について

蛇腹ホース、排水パイプのいずれの接続方法であっても、床から水漏れしていない場合は薬剤や重曹を使うことができます。

シンクにたまった水が少しずつでも流れている場合

市販の薬剤・重曹をシンクに入れ60℃程度のお湯を流してみましょう。この時、ラバーカップや真空式パイプクリーナーを併用し、排水口に圧力をかけてみると効果的です。

シンクにたまった水が全く流れない場合

薬剤・重曹を投入したとしても、効果が出る可能性は低くなります。水がまったく流れていかないということは、排水口から先のつまりの原因となっている部分に、薬剤が十分に届かないためです。したがってこの様な場合にはラバーカップや真空式パイプクリーナー、用意があるようであればワイヤー式パイプクリーナーを使ったつまりの除去に注力しましょう。

築古集合住宅における薬剤使用時の注意点

築年数が20年以上のマンション、アパートなどの集合住宅で排水管がつまり、作業する場合には注意すべきことがあります。築古物件の場合、排水管が鉄管の場合があります。鉄管は強力な薬剤を使いすぎると穴が開いてしまう恐れがあるのです。

台所の排水口に食べ物の固まりや清掃用具を落とした

排水口に食べ物や清掃用具などの固形物を落とした場合に素人でもできる作業を紹介します。

蛇腹ホース内に落下物が見えるとき

排水口を上から覗いて落としたモノが見えるか確認しましょう。もし落としたモノが見えているときは、シンク下の蛇腹ホースを外しましょう。蛇腹ホース内に引っかかっていた場合は幸運です。蛇腹ホースを取り外し、簡単に落としたモノを取り除くことができます。

蛇腹ホースが固くて外せないとき

蛇腹ホース内に落としたモノが見えているが、蛇腹ホースが固くて外せないことがあります。その場合には、ラバーカップを使います。排水パイプやシンク内を水で満たした上でラバーカップを排水口に押し当て、ゆっくりと押し込んだ後、一気に引っ張ります。ラバーカップの吸引力で、水と一緒に落下したモノが吸い上げられて取り出せることがあります。1度試して吸い出せなくても、何度か繰り返し試してみましょう。

蛇腹ホース内に落としたモノが見えない場合は、同じくラバーカップを使って落としたモノを押し流す作業になります。シンク内を水で満たし、排水口にラバーカップをぴったりと合わせ、一気に押し込みます。一般的に台所のシンク下の蛇腹ホースが、台所の排水の通る道の中で最も細い部分です。蛇腹ホースを通過した先は、進めば進むほど排水管は太くなっています。蛇腹ホース部分を通過させることができれば、つまりが解消する可能性が高いです。

尚、モノを落として排水管がつまっている場合は、市販の薬剤では効果がありません。薬剤は熱や化学反応を使ってつまりの原因を溶かす効果を狙ったものだからです。ラバーカップまで使ってつまりが解消しない場合、素人では手に負えない重症のつまりである可能性があります。一度プロに相談することをおすすめします。

台所の排水口から異臭がする

異臭、悪臭がする場合は、薬剤を使用しましょう。薬剤にもいろいろな種類がありますので、できるだけ症状に合った薬剤を使用しましょう。異臭、悪臭の主な原因はほとんどの場合、排水管内に堆積しているヘドロ状態の汚れや食べカスなどです。薬剤を何度か繰り返して投入しましょう。最適な薬剤を使用すれば、ある程度の効果が期待できます。

強力な薬剤を何度も投入しても異臭、悪臭が除去されない場合は、堆積、滞留している汚れが薬剤で溶かせる量を大幅に上回っていると考えられます。この場合はホームセンターなどで売っている簡易的なワイヤーブラシを排水管に差し込んだところで焼け石に水です。各段にパワーの出るプロ用の機材を使って削り取る、吹き飛ばすなどする必要があります。

浄化槽が設置してある戸建ての場合

台所の異臭、悪臭は、庭に浄化槽が設置してある戸建てでよく発生します。浄化槽やその手前の排水管内でガスが発生し、排水管を伝って屋内に流入します。庭に浄化槽が設置されていて、異臭、悪臭がする場合は浄化槽が原因ではないかと疑ってみましょう。発生したガスが流入している場合、そこで暮らしている人の健康に悪い影響を与える可能性があります。早々に専門の業者に相談しましょう。

ディスポーザーについて

ディスポーザーとはシンク下の排水設備に直接取り付ける生ゴミ粉砕機のことです。マンションなど集合住宅でよく見られます。生ゴミなどを自動で砕いて流してくれる優れものです。しかし自分でのメンテナンスはかなり難しく、あくまでも家電製品です。生ゴミを粉砕するために電動モーターを回しているため、誤って生ゴミ以外の異物を入れてしまうと簡単に壊れてしまいます。

万が一ディスポーザーがつまってしまったら、ディスポーザーのメーカーに直接問い合わせることをおすすめします。通常、メーカーの連絡先はディスポーザー本体にシールで貼ってあります。

台所の排水詰まりの予防策

水まわりのトラブルの中でも、台所の排水がつまると大掛かりな作業になることが多々あります。台所は使用頻度が高いことと、水以外に油や食べ残しや食材の切れ端など、水以外の様々なモノが流れるからです。台所の排水トラブルが起こる可能性を少しでも減らすため、以下の予防策をぜひ実践しましょう。

油は可能な限り流さない

油は熱を持っているときはサラサラ流れますが、冷えると固まります。揚げ物に使った油そのものを排水口に流して捨てるのは排水詰まりを誘発するだけでなく、排水管を痛める原因になるので絶対にやめましょう。

また油そのものだけでなく、食器についた油汚れもシンクで洗って落とす前に、あらかじめキッチンペーパーや古紙などで拭き取った上で洗うようにしましょう。

水切りネットを使う

排水口に水以外の固形物をできる限り流さないために、水切りネットなどの便利グッズは可能な限り活用しましょう。もし今まで使っていなかった場合、水切りネットを使い始めると「毎日こんなにたくさんのゴミを流していたのか」と驚くことでしょう。日々そういったゴミが排水管内のどこかに滞留し、流れてくる油とからまっていつか排水管をつまらせる原因となるのです。

パイプ洗浄剤を定期的に使う

パイプ洗浄剤は様々な種類のものが市販されています。塩素系、酸素系、錠剤、液体などです。目的に合ったものを選び、排水管内の汚れが重症化する前にこまめに洗浄することの効果は絶大です。現に生活しているのであれば大なり小なり台所の排水管内は汚れています。つまりがまだ発生していないのであれば、ぜひ今からでもパイプ洗浄剤を定期的に使うようにしましょう。

プロに定期メンテナンスを依頼する

台所の排水管のメンテナンスを定期的にプロに依頼している家庭は実に少ないのですが、できる限り1年~2年に1度は水道業者に依頼することをおすすめします。排水管をつまらせてから専門の業者に依頼するよりも、定期的なメンテナンスであれば費用もそれほどかかりません。つまりが発生していない状態でのメンテナンスの場合、「業務用薬剤処理」「高圧洗浄作業」「ワイヤートーラー作業」を行えば十分きれいになります。費用の目安は、排水管の長さや形状によって異なりますが、戸建てで8,000円~25,000円くらいで済みます。排水管をつまらせてしまってから水道業者に緊急依頼すると費用はもっと高くなります。排水管内の汚れや堆積物を除去することが難しいケースでは、排水管の交換工事が必要になる場合すらあります。

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