現在ほとんどの家庭に普及している水洗タンクは、低い位置に設置されている「ロータンク」と呼ばれるものです。トイレのトラブルを自分で解消しようとする場合など、ロータンクについての知識は必要不可欠です。ここではロータンクにはどのような種類があるのか、ロータンク内部を確認する際のフタの開け方、タンク内の構造やその仕組みを解説しています。自分でトイレタンクのメンテナンスをする場合などの参考にしてください。
ロータンクの種類
現在多くの家庭に普及しているタンクはロータンクと呼ばれるものです。水洗タンクが低い位置にについているタイプのことです。ロータンクもいくつかの種類に分けられますが、「隅つきロータンク」と「密結型ロータンク」が代表的です。この2つは形が異なるだけで、水の流れる仕組みは同じです。ロータンクの内部の構造もメーカーや型式によって細かく異なるものの、基本的な仕組みが同じですのでメンテナンスも同じ考え方で行うことができます。
隅つきロータンク
壁の角に三角形(三角柱)のタンクが取り付けられているタイプを見たことがないでしょうか。これが隅つきロータンクです。三角形(三角柱)のタンクからパイプが伸びて便器に接続されています。和式も洋式もあります。以前はこの隅つきロータンクが多かったのですが、今では密結型ロータンクが主流となっています。
密結型ロータンク
密結型ロータンクは、密結ロータンク、密結形ロータンクなど、メーカーによっても若干呼称が異なったりしますが、洋式便器の後ろに便器と密着して設置されているタンクのことをいいます。手洗い管がついているもの、ついていないものがあります。手洗い管がある場合、タンクの上の皿の部分の中央にある場合、多くは向かって左側の隅についているものなどがあります。
ロータンクのふたの開け方
トイレの水が出ない、流れないといったトラブルに見舞われた場合、何よりもまずロータンクの内に異常が無いかを確認する必要があります。ロータンクのを開けて、異常があるかをチェックしなくてはいけません。タンクのフタは陶器なので、割らないように注意してください。賃貸物件などの場合は特に、タンクのフタが樹脂製のことがあります。そう簡単には割れないものの、古いと変形したり固着していたりするため、外すときに力を加えすぎて割ることのないようにしましょう。
手洗い器のないタンクの場合
フタを垂直に持ち上げれば外れます。陶器製のタンクの場合、ふただけでも重いので落としたり周囲のモノにぶつけたりしないように注意して外しましょう。
手洗い器つきのタンクの場合
新しいタイプのタンクであれば、タンクのふたは、手洗い器のあるなしに関わらず、上に持ち上げれば外れるものがほとんどです。また、タンクのふたを外すと、内側に樹脂カバーがついているものもあります。このカバーも垂直に持ち上げればはずれます。
従来型のタンクの場合でもそのまま持ち上げて外せるものもありますが、多くは手洗い管とボールタップが「金属パイプ」「蛇腹ホース」「ゴムホース」などで接続されています。勢いよく外してしまうと接続部分に強い力が入って破損させてしまう恐れがあります。まずはふたを少し持ち上げて、タンク内がどのような構造になっているタイプかを確認し、それに合った方法で外してください。
金属パイプでつながっている
手洗い管がタンクの角についているタイプは、ボールタップから金属パイプが上に上がっていて、それが手洗い管に接続されています。このタイプは、フタをグッと垂直に持ち上げればはずれます。
陀腹ホースでつながっている
ボールタップと手洗い器が半透明の陀腹ホースでつながっている場合、手洗い器への接続部分にあるナットを手で左(反時計回り)にまわせばはずれます。
ナットがない場合は、差し込んであるだけなので、そのまま引っ張ればはずれます。なかなか取れない場合もありますが、そのときは少し強めに引っ張ってください。
ゴムホースでつながっている
ゴムホースの場合は、接続部分を締めているバンドをゆるめてはずします。ゴムがくっついていて、どうしてもはずせない場合は、接続部分近くでホースを切り、カッターで縦に切れ目を入れて、むくようにはがし取るしかありません。そうした場合は、新しいホースに交換が必要。ホースはホームセンターなどで購入できます。
ロータンク内部の構造
トイレタンクの水がどんなしくみで流れるかが分かれば、水が止まらない、水が出ないといったトラブルの対処法もおのずとわかるはずです。一見複雑そうに見えるトイレタンクの内部ですが、仕組みは意外と単純です。
ロータンク内の各部名称
いざという時のために、あらかじめ各部の名称と役割、そして水が出たり、止まったりする構造をよく理解しておきましょう。なお、メーカーによって呼び名が違う場合があります。
手洗い管(手洗い器つきのみ)
給水が始まると同時に水が出て、手を洗うことができます。
ボールタップ
タンク内の水がなくなって浮球が下がると給水し、水が一定量たまって浮き球が上がれば給水を止める働きをします。なお、便器がサイホン式や、サイホンゼット式の場合は、下のイラストのように補助水管がついていて、その先をオーバーフロー管に接続するようになっています。
止水栓
タンク内でトラブルが起こった場合は、これを止めることで止水ができます。また、手洗い管の水の勢いの調整もこれで行うことができます。
支持棒
浮球の動きをボールタップに伝えます。
フロートバルブ
フロートバルブの開閉により、タンク内の水を便器へ流したり、止めたりします。このフロートバルブには、レバーハンドルと連動する鎖がついています。また、鎖がレバーハンドルからフロートバルブにつながっていますが鎖がたるみ過ぎても、張りすぎてもトラブル、故障の元になります。
クサリ
ハンドルの動きを浮ゴムに伝えます。
オーバーフロー管
タンク内の故障によって給水が止まらなくなった場合、水がタンクの外にあふれるのを防ぐがめ、ここから余分な水を便器に流します。
レバーハンドル
ハンドルのアーム
浮球
水に浮いていて、水位の変化に合わせて上下します。その動きが支持棒を通してボールタップに伝わります。球体、あるいはだ円形のものが一般的です。四角形や円柱形をしている場合は新しいタイプのトイレです。
- ハンドルをまわすと、くさりによって浮ゴムが引き上げられ、水が便器に流れ出します。
- 水位とともに浮球が下がり、ボールタップの弁が開いて水の供給が始まります。
- タンク内の水が便器に流れ終わると、浮ゴムが閉じます。浮ゴムが閉じると、タンクに水がたまり始めます。
- 水位が上がると、浮き球が押し上げられ、一定量たまるとボールタップからの給水がとまります。
※オーバーフロー管の先より2~3cm低い位置で水位が止まるのが正常です。
水の流れを観察するときは
手洗い器がないタイプなら、タンクのフタを取り、通常通りハンドルをまわして水を流しても大丈夫ですが、問題なのは手洗い器つきの場合。フタを外した状態のままハンドルをまわすと水が吹き出てしまいます。手洗い器つきの場合は、陀腹ホースやゴムホースの先を手でタンクの中に向けてからハンドルをまわすようにしましょう。ホースでなく金属パイプがついているものなら、コップなどをかぶせておけば大丈夫です。
事例で知るトイレタンクの構造や仕組み
洋式トイレの便器にちょろちょろと水が流れている場合の手順を見ていくと、トイレタンクの構造や仕組みが理解できます。ここでは、便器に水がちょろちょろと流れて止まらない場合を例に取り上げてみます。トイレタンク内部の部品の不具合や、故障が原因の可能性が高いです。
尚、トイレの水が流れて止まらないトラブルについては、下記の記事でも詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。
タンクのふたを開けて中の状態を確認する
トイレタンクのふたを開ける時はゆっくり静かに開けましょう。手洗い器のあるタンクのふたは、裏側から給水ホースが出ておりトイレタンク内の部品に接続されています。ふたを勢いよく開けてしまうと給水ホースが外れてなかなか元に戻せなくなります。
トイレタンクのふたを開けたときに、水面から出ている管が見えるはずです。煙突に似た物です。これがオーバーフロー管ですが、オーバーフロー管に「-WL-」と表示があれば、その位置が標準の水位です。この表示の無い場合や劣化して見えない時はオーバーフロー管の先から2cm~3cm下が適切な水位となります。この水位よりも実際の水位が高いか、低いかを確認しましょう。
大まかに言えばトイレタンク内の部品はオーバーフロー管、ボールタップ、ハンドルレバーの3点です。この部品のうちのどれかが不具合、故障、破損などを起こすと、便器に水がちょろちょろと出てきます。
- オーバーフロー管:タンクのフタを開けたらタンク内中央に煙突に似た部品があります。これがオーバーフロー管です。
- ボールタップ:トイレタンク内の左右どちらかに白い浮き玉が付いている部品があります。これをボールタップといいます。
- ハンドルレバー:タンク内の両サイドどちらかにレバーハンドルが設置してあります。レバーから鎖が伸びています。
ボールタップの仕組み
トイレタンクの中に水が無くなると給水し、タンクの水量が一定になると給水をストップさせるのがボールタップの役目です。トイレタンク内に水がたまるにつれて浮玉が上がり、一定の水位までたまると、浮玉の浮力によってピストンバルブの上の弁パッキンが穴をふさいで、水が止まります。便器の洗浄を行い、トイレタンクの水が少なくなると浮玉が下がり始め、浮玉と連動しているピストンバルブが下がって給水が始まります。
ボールタップのピストンバルブやそのパッキングの交換
ちょろちょろと水もれがしていて、水位がオーバーフロー管より上というときに、浮玉を持ち上げてみても水が止まらない場合は、ボールタップ内のピストンバルブのパッキンにゴミがはさまっているか、パッキンが古くなって痛んでいるのが原因と考えられます。その場合、ピストンバルブを取り出して、パッキングをきれいにするか、新しいものに交換すれば直る場合があります。
交換用のパッキンはボールタップ内パッキンとして水道用品売り場に置かれています。外したピストンバルブとパッキングを持参して合うかどうか確認すると確実です。合うサイズがない場合は、メーカーに問い合わせてみましょう。
取り寄せが必要な場合
ただし、ボールタップの中には、ピストンバルブがプラスチック製で消耗品扱いになっていて、ピストンバルブごとの交換が必要なタイプもあります。これらは、販売店やメーカーから新しいピストンバルブを取り寄せる必要があります。
自分で交換できないタイプ
また、トイレタンクの内側にカバーがあるタイプやトイレタンクが樹脂製のものなど、新しいタイプのトイレタンクには、ピストンバルブの交換が自分ではできないものもあります。ボールタップの形状がここで説明するものと大きく違う場合は、分解する前に取り扱い説明書で確認するか、メーカーに問い合わせてください。
なお、ピストンバルブのパッキンを交換しても水もれが直らない場合や、ボールタップを分解して新しい部品と交換しても水が止まらない時はボールタップごと交換することが必要になります。
ボールタップのはずし方
ボールタップ内のピストンバルブやそのパッキンを交換する場合、トイレタンクからボールタップをはずさなくても作業ができる場合は、そのままの状態で作業しても問題ありませんが、作業しにくいケースが多いのでボールタップをはずして作業する方がおすすめです。
その場合、ボールタップをつけ直すときに給水管パッキンを新しいものに交換する必要があるので、あらかじめ用意しておきましょう。古い給水管パッキングを使うと水もれの原因になります。パッキンは13ミリを使います。
トイレタンクとボールタップの間に入れるパッキンは、傷んでいなければ古いものを再利用しても問題ありませんが、本体ごと交換したいところです。
オーバーフロー管の交換方法
オーバーフロー管とは洋式トイレのタンク内の中央辺りにある筒状の、煙突に似た部品のことです。この部品の下には黒いゴムの部品が鎖につながっています。鎖はトイレのハンドルレバーにつながっています。
この黒い丸いゴムがロータンクゴムフロートと言います。このゴムフロートが長い年月使用していると劣化し、触ると指が黒くなり、変形してすき間が出来てそこから水漏れして、タンクから便器に水が出てくることがあります。指で触って黒くなるようであれば交換しましょう。
ロータンクゴムフロートの交換
ゴムフロートの交換方法は、止水栓を閉めて水を止めて、タンクの水を流します。
止水栓の操作方法については、下記の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。
この時に元々付いているゴムフロートの鎖のたるみ加減を、写真に残すなどして記録しておきましょう。トイレタンクの水が抜けたら、ゴムフロートの根元がオーバーフロー管に接続してあり、これをつまんで外側に引っ張れば外せます。鎖はレバーに引っ掛けてあるので、外しましょう。
取り付けは同じ様に戻せばいいのですが、注意点は 鎖が張りすぎても、たるみすぎてもうまく機能しません。ゴムフロートを外す前のたるみ加減にして接続しましょう。ゴムフロートのサイズはいくつか種類があります。サイズを間違えず、適合するゴムフロートを購入しましょう。
オーバーフロー管の種類
交換作業の前にオーバーフロー管(サイフォン管)の種類とサイズが何種類かあることを知っておきましょう。自力で作業して直す場合は部品をホームセンターで購入することが多いと思います。トイレタンクのメーカーはTOTOかINAXがほとんどでしょう。
トイレがTOTOの場合はホームセンターでTOTOの純正部品を探すと数や種類に限りがありますので、(KAKUDAI、SANEI)などの汎用品を利用するとよいでしょう。
- SANEI ロータンク用サイフォン32
- SANEI 密接用ロータンクサイフォン38
- SANEI 32、38、51
上記のようなサイズがあります。
- カクダイ ロータンク排水弁セット(密結用) 4655-5
- カクダイ ロータンク排水弁セット(密結用) 4655-38
- カクダイ ロータンク排水弁セット 4651-38
- カクダイ ロータンク排水弁セット 4651-32
INAX
- オーバーフロー管高さA:302mm
※INAXアメージュG・M・リトイレロータンク用
- オーバーフロー管高さA:268mm
- オーバーフロー管高さ278mm
- オーバーフロー管高さA:260mm
- オーバーフロー管高さA:298mm
※INAX製一般洋風便器でDT-510、DT-810、DT-810Z、T-510、T-810、T-810Zに適合
- オーバーフロー管を55ミリ切断:旧フロート弁TF-810C-X2
- オーバーフロー管を30ミリ切断:旧フロート弁TF-810C
既存のオーバーフロー管の長さを測り、長さが長ければ切断します。水位もオーバーフロー管を切断した分低く調整する必要があります。
使用年数の長いタンクの着脱では密結パッキンを新しく取替えないと漏水します。適合するパッキンを必ず用意してください。便器の品番により適合する密結パッキンは変わります。
- ※便器品番C18・C18P:TF-810G-Bが適合
- ※便器品番C18S・C18PU:TF-818G-Bが適合
オーバーフロー管を交換する
トイレタンク下方、中央辺りに大きなネジがあります。これをパイプレンチで回し外しましょう。外れたらタンク内からオーバーフロー管が外せます。鎖がレバーに伸びていますので外して下さい。
これでオーバーフロー管は外せたはずです。新しい部品と同じ手順で交換すれば完了です。ポイントはオーバーフロー管の元の位置に戻すこと。元々付いていた場所には跡が付いています。そこに合わせて接続します。また鎖の長さも張りすぎず、たるみ過ぎないようにレバーに繋ぎます。たるみ具合が適切でないと、ゴムフロートが引っ張りあげられた状態になって水が出続けたり、レバーをまわしてもうまく排水できなくなります。
もしこの作業をしてもまだ同じように水漏れをする場合、ロータンクサイフォン取り付けパッキンを2枚重ねて設置してみましょう。トイレタンク内のオーバーフロー管の根元にある黒いパッキンで、トイレタンクとオーバーフロー管の間に挟むパッキンのことです。
トイレタンクの外し方
トイレタンクの下方、両サイドにボルトが2本あります。このボルトが密結ボルトと言います。モンキーレンチなどで回して外します。ボルトが外れたらトイレタンクを持ち上げればトイレタンクは外せます。
密結パッキンを交換する
トイレタンクと便器の間にある黒いゴムのことです。トイレタンクを外してオーバーフロー管の外側に付いているドーナツほどの黒いゴムのパッキンです。このパッキンを交換すれば便器に漏れる水漏れが直ることもあります。
ロータンクの種類、構造、仕組みのまとめ
以上、教科書的な解説から、ちょろちょろと水が流れて止まらない場合にどのような手順でトイレタンク内に手を加えていくかを解説しました。道具やパーツさえ手元にそろっていれば、作業自体はとても簡単です。漏水などの甚大な被害を及ぼすようなトラブルを未然に防ぐためにも、ぜひロータンクについてはよく知った上で、自分でもメンテナンスできるようになりましょう。