トイレ、お風呂、キッチン、洗面台などの排水管がつまり、直し方を調べているうちにワイヤーブラシの存在を知る方が多いようです。トイレのつまりを直す道具のうち、ラバーカップ(スッポン)は知っているがワイヤーブラシが何なのか見当もつかない、というのが普通だと思います。ワイヤーブラシの種類や使い方など、素人の方でも分かりやすいように解説します。
ワイヤーブラシの基礎知識
まずはワイヤーブラシの基本的な知識を押さえましょう。
ワイヤーブラシとは
ワイヤーブラシとは、排水管の内部を清掃するための道具です。「ワイヤーブラシ」「ワイヤー式パイプクリーナー」「ワイヤードレンブラシ」「パイプクリーナー」など様々な呼ばれ方をしますが、ここではワイヤーブラシと呼ぶことにします。
上の画像の商品は、三栄水詮製作所から出ている「パイプクリーナー PR80B-3」です。三栄水詮製作所は水まわりの汎用パーツなどを広く製造しているメーカーで、水道業者で1度もお世話になったことがないという作業員はまずいないでしょう。「サンエイさん」と敬意と愛着を込めて呼ぶことが多く、末永くものつくりを続けてほしいメーカーさんです。ここでは上記の商品を例に解説していきます。
開封すると上の画像のように、柄の部分とワイヤーの部分に分かれて入っています。ワイヤーの先端に、らせん状のヘッドがついているのが分かると思います。らせん状のワイヤーを柄の部分に取り付け、洗浄したい排水管に沿わせて入れていき、先端のヘッド部分で汚れやつまりの原因になっているものを取り除く仕組みになっています。
排水管の清掃や、排水管のつまりの除去に使われます。トイレに限らず、洗面台、キッチン、お風呂の排水管で使うことができます。
ワイヤーブラシの種類
ワイヤーブラシは家庭用のワイヤーブラシと業務用のワイヤーブラシに分けることができます。業務用のワイヤーブラシは「トーラー」と呼ばれることが多く、家庭用のそれとは耐久性、操作性、発揮する威力がケタ違いであり別物と考えた方がよいです。
家庭用ワイヤーブラシ
家庭用のワイヤーブラシは、インターネットやホームセンターで手軽に購入できます。三栄水詮製作所のパイプクリーナー(PR80B-3)はホームセンターで税込み1,077円でした。三栄水詮製作所からもいくつかの種類が販売されています。予算を3,000円程度までみておけば、その他メーカーも含めて様々な種類の中から選ぶことができます。
同じ型のワイヤーブラシでも、ワイヤーの長さによって何種類か販売されていることが多いです。三栄水詮製作所のパイプクリーナー(PR80B-3)はワイヤーが3mのタイプです。その他品番違いで、5m(PR80-5)、10m(PR80-10)、15m(PR80-15)のタイプが売っています。一般家庭で用意する場合、用途に合わせて選ぶとよいでしょう。
家庭用ワイヤーブラシはワイヤーが収納式になっているものと、そうでないものがあります。収納式はハンドル部分を回したときに手元のワイヤーがよじれず、取りまわしが容易であることが利点です。
ハンドル部分の形状もメーカーによって異なり、操作性もまちまちですが、基本的な使い方は一緒ですし、果たす機能も変わりません。購入する場合は使いやすそうなものを選ぶとよいでしょう。
業務用ワイヤーブラシ(トーラー)
業務用のワイヤーブラシ(トーラー)は家庭用とは全く別物で、「トーラー」「ワイヤートーラー」と呼ばれます。基本的な構造や役割は家庭用と同じですが、作りの強さや威力が全く異なります。
上の画像を見ると分かるように、作りが全く異なります。排水管内を清掃する、つまりを除去する、と考えた時にキモとなるワイヤーの強さ、操作性が段違いに良いとともに、長さが数メートルから数十メートルのものまで幅広く対応ができるようになっています。
ワイヤーブラシの使い方
それではワイヤーブラシの使い方を解説します。
養生をする
ビニールシートのほか、古くなった雑巾やボロ布、新聞紙など敷きつめるようにします。壁にもトイレや洗面台で使う場合、壁にも養生をすることが重要です。
トイレの養生
キッチンの養生
洗面台の養生
ワイヤーブラシを組みたてる
ワイヤーブラシを組み立てましょう。商品によって組み立て方は異なりますが、三栄水詮製作所のパイプクリーナー(PR80B-3)であれば、蝶ボルト(固定ネジ)を緩めてからワイヤーをグリップ部分に通します。
上の画像でつまんでいる部分が蝶ボルト(固定ネジ)です。この蝶ボルト(固定ネジ)を締めればワイヤーとグリップは固定され、緩めればワイヤーはスルスルと動くようになります。
排水口に押し込む
蝶ボルト(固定ネジ)を緩めたまま、ワイヤーをゆっくりと排水口や便器の水たまりの穴部分に押し込みます。ワイヤー全体が排水口に落ちないように注意しましょう。
回転させながら進む
ワイヤーを入れていくと、先端のらせん状のヘッド部分が排水管内の汚れと接触しながら進んでいきます。何かに当たった感触があって進まなくなったら、蝶ボルト(固定ネジ)を締めて、グリップ部分をまわしてワイヤーを回転させながら進みます。
このとき余った手元のワイヤーがよじれてあばれる可能性があります。ケガをしたり周囲に損害を与えたりしないように、余ったワイヤー束ねておくようにしましょう。
グリップを数回まわしたら、ワイヤーを引き抜きます。ボロ布を持った手でワイヤーを軽く握り、もう一方の手でワイヤーを引くようにして、ワイヤーについた汚れを拭き取りながら引き抜いていきます。ワイヤーがすべて出たら、ヘッド部分についた汚れも拭き取りましょう。
つまりが解消されたか確認する
最後に、水を少しずつ流して、つまりが解消されたかどうか確認します。解消されていない場合は再度ワイヤーを押し込み回転させ、引き抜く作業を繰り返します。
使用後の片付け方
使い終わったワイヤーブラシは、使い捨てのスポンジやボロ布、歯ブラシなどに食器用洗剤をつけてきれいに洗ってから、よく乾かしましょう。最後にCRE556など、防錆潤滑剤を吹きかけてからしまいます。
きちんと後始末をしないと、次にいざ使おうというときにサビだらけで使えなくなってしまいます。
家庭用ワイヤーブラシの弱点
家庭用ワイヤーブラシは安価で、手軽に入手できる上、収納する場所もさほど取りません。排水管がつまった時には重宝する道具です。
しかし業務用のトーラーと違い、ワイヤーや先端のブラシ部分の強度が弱いため、つまりの原因を除去する力があまり強くありません。つまりの原因となっている排水管の箇所が完全にふさがっているような場合、家庭用ワイヤーブラシでは歯が立ちません。
また先端のブラシがつまっている箇所を通過し、排水の通り道を作れてつまりが解消したように思えても、小さな穴しかあけられていなかった場合は再発の可能性もあります。そして排水管から下水管までは数十メートルあるのが普通ですので、つまった箇所が排水口から遠いとワイヤーが届かないことも当然でてきます。
まとめ
家庭用ワイヤーブラシは手ごろに排水管内を清掃できる便利な道具ですが、その用途としては主に排水管内を清掃する道具ととらえた方がよいかもしれません。排水管がつまる前に定期的にワイヤーブラシで排水管内を清掃すれば、つまりを起こす可能性は減らせます。
完全につまってしまった排水管内を、家庭用のワイヤーブラシで貫通させるのはなかなか難しいため、プロに相談して業務用のトーラー作業や高圧洗浄作業、場合によっては排水管の交換などを行った方が早いかもしれません。