お風呂(浴室)でシャワーを浴びていたら突然排水が流れていかなくなった、という事態を経験したことのある人はそこまで多くないかもしれません。しかし長い間住んでいる戸建てであればいつかそのようなトラブルに遭遇します。住み始めたばかりの賃貸物件でも、管理状態が悪ければロシアンルーレットのように思いのほか早く排水トラブルに遭遇するかもしれません。
ここではお風呂(浴室)の排水がつまった場合に、一般家庭にあるもの、比較的簡単に手に入るものを使ったつまりの直し方や、水まわりの修理のプロがどのように対処するかなどを詳しく解説します。また、浴室排水の仕組みや、浴室のつまりを引き起こす原因についても言及しています。かなりボリュームがありますので、もし今まさにトラブルが起きていて急いでいる場合は、記事内の目次から必要な情報の部分に飛んでください。
浴室排水のつまり除去の予備知識
風呂(浴室)の排水がつまり、自力で解消しようとする場合にまず知っておくべきトピックを解説します。
築古物件の鋳鉄管には要注意
まず、排水管のつまりを解消しようとした結果、排水パイプに穴をあけてしまう危険性について知っておきましょう。築浅物件であれば通常塩ビの排水パイプが使われているのでそれほど神経質になる必要はありません。しかし築30年を経過している物件については、排水パイプが鋳鉄管、つまり鉄製のパイプが使われていることが多々あります。排水パイプそのものが鉄製のパイプということもあれば、排水トラップのみが鉄製ということもあります。
施工後30年以上経過した鋳鉄管は当然に疲労しています。塩素系の強力な排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を使うと疲労してもろくなっている鋳鉄管に穴が空く可能性があります。また、ワイヤーブラシ(ワイヤー式パイプクリーナー)や、ハンガーを伸ばした針金を排水口から入れてあまり強く鋳鉄管に力を加えると、同じく穴があく可能性があります。プロであっても、プロ仕様のワイヤートーラーを築古物件の鋳鉄管で使うことには躊躇します。緊急水道業者を呼んだら「これ以上の手を打つと排水管に穴が開く可能性があります、責任は取れません、それでもやりますか」と聞かれたことがある人もいるかもしれません。冷たい対応だな、と感じるかもしれませんが、その水道業者は真実を伝えています。本当に穴を開けてしまうかもしれないのです。穴を開けてしまうと、特にマンションやアパートなどの共同住宅では階下漏水事故に繋がります。
若干話が逸れましたが、排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を使ったり、ワイヤーブラシ(ワイヤー式パイプクリーナー)を使ったりする場合には、事前に排水管の素材を確認しましょう。鋳鉄管であれば安易に手を出さず、プロを呼んだ方が安心です。
お湯(熱湯)は絶対に使わないこと
排水管のつまりにお湯が効果的であることは、近頃では広く知られてきました。しかし、熱湯を使うのは厳禁です。排水管の素材が塩ビであれ鋳鉄管であれ、そもそも熱湯に耐える得る設計になっていません。塩ビであれば素材が溶けたり排水パイプがゆがんだりして、水漏れ、排水詰まりを引き起こすこともあります。築古物件の鋳鉄管では急激な温度変化がどんな悪影響を与えるか予測できません。
もしそれでもお湯をためしたい場合は、60℃以下に温度を設定して使いましょう。しかし風呂(浴室)の排水管の場合は効果が限定的です。その理由は後述します。
重曹、お酢は風呂(浴室)排水のつまりに効くのか
自然派の生活の知恵や工夫が流行して久しいですが、風呂(浴室)の排水のつまりにも重曹とお酢を同量程度混ぜて投入すると効果的、と説明するサイトが散見されます。緊急水道業者の中にも、重曹とお酢は効果があると考える作業員はいます。しかしこのサイトの運営主体である水まわりパートナーでは、重曹、お酢の効果には懐疑的です。どの業界もかつてはそうであったように、水道業界も体育会系的な体質がありました。先輩作業員の教えは正しいものとして従うべきものでした。そんな中で語られる知恵のひとつに、重曹とお酢の効果もありました。
しかし時代も変わり、これだけ情報へのアクセスが容易になった今でも重曹とお酢が排水詰まりの除去に効果を発揮する、という情報が飛び交っているのが不思議です。炭酸水を投入するのとたいして変わりません。今まで現場で目にしてきた排水詰まりの原因となっていたヘドロや髪の毛の山に、炭酸水をちょっとかけたところで状況が変わるとは全く考えられません。「全く効果がないと証明できない」から「効果があるかもしれないもの」のリストに入っている程度という認識でよいと思います。もし手元に重曹、お酢が無いのであれば、わざわざ排水詰まりを抜くために買いに走るほどのものではないでしょう。それであれば長く使えるラバーカップ(スッポン)を1本買った方がよっぽど役に立ちます。
浴室排水の構造・仕組み
風呂(浴室)の排水の構造を押さえましょう。
排水トラップについて
「排水トラップ」という単語を耳にしたことがあるでしょうか。排水トラップとは、排水管をS字やP字に曲げるなどして、その部分に常に水がたまっている状態にする仕組みのことです。風呂(浴室)以外にも、トイレ、台所、洗面台、洗濯パンなど、排水が流れる場所には通常設置されています。
排水トラップの役割は、屋内からみると排水管のもっと奥、つまり下水側から臭いや害虫が排水管を伝って屋内に侵入してくることを防ぐことです。家庭の排水管が下水管に接続するまでの間に何も遮るモノがないと、下水管や排水マスから屋内まで筒抜け状態になり不衛生です。排水管に水でふたをする役割が、排水トラップにはあるということです。
椀トラップ(ワントラップ)
目皿とプラスチックの椀がビス(ネジ)でとめられて一体化しているタイプと、目皿と椀が別々になっているタイプがあります。古いタイプでは、目皿とともに椀も鉄製のものもあります。
ドラムトラップ
ユニットバスでは多く採用されているのがドラムトラップです。ユニットバス以外でも、最近の浴室ではドラムトラップとなっていることが多いのでドラムトラップの方が馴染みがあるかもしれません。長方形の排水溝があるものは、ふたを開けると中に排水口があります。
風呂(浴室)の排水がつまる原因
風呂(浴室)の排水のつまりを引き起こす原因について解説します。
大量の髪の毛
風呂(浴室)において一番多いのは髪の毛です。髪の毛が大量に排水トラップにたまってつまるケースがほとんどです。この場合はプロを呼ぶまでもなく、排水トラップを清掃すれば水は流れるようになります。
ヘドロ状の汚れ
排水パイプの内側に付着しているヌメヌメとした汚れを触ったことがある方も多いのではないでしょうか。風呂(浴室)に限らず、洗面台、キッチンでもよく目にすることでしょう。風呂(浴室)の場合は、せっけんやシャンプー、コンディショナーを日々使います。男性ならシェービングクリームも使うでしょうし、体の汚れや汗も流れていきます。そういった汚れの元が長い年月かけて堆積して、通常排水管内にはヘドロ状の汚れがたまっています。髪の毛と絡み合いながら、堆積しすぎると排水管をつまらせます。
レンガ、タイル片、木材
特に築古の戸建て住宅であり得る意外なつまりの原因です。風呂(浴室)の排水がなぜレンガ、タイル片、木材でつまるのか、全くイメージできない人も多いかもしれません。しかし現実にこれらによってつまりが引き起こされ、そしてこれらによってつまった場合はまず素人の装備では解決できません。もっと言うと基本的には工事が必要となります。
築古の戸建て住宅で、排水トラップの部分に目皿や、ましてやヘアキャッチャーなど何も設置されていないケースがあります。素のままの排水管に排水が流れていくようなイメージです。そこに、浴室内の内壁の建材であるタイル片などが流れ込んで床下の排水管に堆積していく、というのが最も分かりやすい例です。
浴室内の内壁の建材ではなく、排水トラップ周辺のレンガ、タイル片、木材が老朽化して剥がれ落ち、排水管内に流れ込むという事象が発生します。これはなかなかイメージできないかもしれません。いずれにせよ、居住者の心がけとは全く無関係の原因によって、レンガ、タイル片、木片などが排水管内に転がり落ち、下水管までは運ばれずに床下の排水管内にゴロゴロと堆積していくことがある、ということは覚えておいて損はありません。築古の戸建てにお住まいで、浴室排水口が無防備なタイプの場合、早急に水道業者を呼んで屋外の点検口から高圧洗浄をしてもらうことをおすすめします。床下排水のレンガ、タイル片、木片は家庭向けの道具ではまず取り除けません。
お湯は風呂(浴室)の排水詰まりには効かない
お風呂(浴室)のつまりの直し方について、お湯を排水口に流し入れる方法を紹介しているサイトが散見されるのですが、お湯は浴室のつまり除去には効かないと言い切ってもいいのではと考えています。お湯が効果を発揮するのは、つまりの原因が温度の上昇によってほぐれたり、ふやけたりする場合に限られます。トイレのつまりであれば大量のトイレットペーパーや便が原因でつまります。キッチンであれば油脂が原因でつまることがあります。そのような場合に、お湯が効果を発揮することがあるのはトイレ、キッチンのつまりの解消法のページで説明しています。
しかしお風呂(浴室)に限っては、多くの場合髪の毛が原因です。普段40℃くらいのお湯を使っているお風呂(浴室)の排水管に、排水管をいためないと言われる60℃以下のお湯を流し入れたところで、排水管内の状況はほとんど変わりません。給湯器の温度を上げていつもより熱いお湯を流すことは大した手間ではないのでダメ元でやってみるのもよいですが、あまり期待しないようにしましょう。
なお、プロでもお湯を使うことがありますが、それは排水管洗浄剤(パイプクリーナー)との合わせ技で使う場合であり、次項で解説します。
排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を使った浴室排水詰まりの直し方
お風呂(浴室)の排水管のつまりを排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を使って直す方法を解説します。
排水管洗浄剤(パイプクリーナー)は試す価値あり
コンビニやホームセンターで気軽に手に入る排水管洗浄剤(パイプクリーナー)ですが、その効果にあまり期待せずにお守り代わりに定期的に使っている方も多いかもしれません。確かに各メーカーが自社商品を宣伝するときに使う映像ほどの威力があるかどうかは分かりませんが、プロの目から見ても排水管のメンテナンスには十分に効果を発揮しますので使う価値を感じますし、いざ排水管がつまった場合でも詰まりを解消する効果が実際にあります。
浴室排水詰まりの原因の髪の毛や有機物を溶かす
お風呂(浴室)の排水詰まりの場合、髪の毛が原因であることがほとんどです。主に髪の毛が原因の軽いつまりであれば、髪の毛などの有機物を溶かす効果がある塩素系の排水管洗浄剤が効果を発揮します。
排水管洗浄剤(パイプクリーナー)の使い方
手順は各商品のパッケージに記載されているので、注意書きにも目を通した上で手順通り行えばOKですが、一般的な流れを記載しておきます。
排水口の部品を全て外す
排水口のふたを開けて、排水トラップまでバラしたことがない人もいるかもしれませんが簡単に外すことができます。ふたは持ち上げれば外れ、目皿やヘアキャッチャーは反時計回りに回すと外すことができます。ドラムトラップであればその下に封水筒があり、持ち上げれば取り外すことができます。
水が引いてから薬剤を投入する
排水口からどのくらい先で詰まっているか見える場合であれ見えない場合であれ、水が可能な限り引いてから排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を注ぎ込むようにしましょう。水がたまっている状態で流し込んでしまうと、つまりの原因となっている箇所に薬剤が届かなかったり、洗浄剤の成分が水で薄まって効果が半減してしまいます。
薬剤ごとの指定時間放置する
排水管洗浄剤(パイプクリーナー)の種類ごとに、何分程度放置するか指定されているはずです。長時間放置すればよいというわけではありません。逆に時間を置きすぎると、取れた汚れが原因となって詰まりを悪化させたりする可能性があります。
排水管洗浄剤(パイプクリーナー)が効かないケース
プロの目からみても効果が見込めて頼りになる排水管洗浄剤(パイプクリーナー)ですが、効果を発揮できないケースがあります。
固形物などの落下物が原因のとき
当然のことではありますが、排水管洗浄剤(パイプクリーナー)は毛髪などの有機物を分解することが何より大きな役割です。剃刀の刃や歯ブラシなどの固形物が原因となって詰まっている場合は効果がありません。また、床下でレンガ、タイル片、木片などが堆積して詰まっている場合には全く歯が立ちません。
排水管が固くふさがれているとき
風呂(浴室)の排水管には、毛髪以外にもせっけん、シャンプー、コンディショナー、髭剃りのジェル、皮脂の汚れなどが日々流れ込んでいます。それらの汚れや水あかなどが排水管内に付き、そこに毛髪が絡みつき、また日々の汚れや水あかがその毛髪につき、またその汚れに毛髪が絡みつく、という負のスパイラルが起こっています。そして長い年月かけて、その汚れと毛髪がカチカチに固まっていき、ついに排水管をふさいでつまりが発生するケースがあります。
このようなケースでは、毛髪とはいえどもその他の汚れを巻き込んでカチカチに固まっています。こうなってしまうと、薬剤を投入したところで成分がしみ込んでくれません。またこの流れをたどってつまった場合、排水管内の一部分だけがつまっているというわけではなく、排水管内を広く汚れと毛髪が占拠しています。排水口側からちょっと薬剤を流し込んだくらいでは、びくともしないという状態があります。
排水管洗浄剤の種類とその成分
排水管洗浄剤にはたくさんの種類が販売されています。
- パイプユニッシュ
- マイクリーナー
- e-coso 排水管洗浄剤neo
- お願いだからほっといて
- ジョーカル
- パイプクリン
- ピーピースルー
- ピーピーライト
- ピーピースルーf
- サラヤ
プロはピーピースルーや、デオライトを使用することが多いです。デオライトは特に尿石に効果の高い薬剤で、浴室に使うケースは稀ですが、ごく特殊な使用法を取る場合には浴室でも使用します。
プロは薬剤とお湯の合わせ技を使うこともありますが、基本的に薬剤の威力を促進しますが一般家庭で行うのは危険です。
ラバーカップを使った浴室排水のつまりの直し方
ラバーカップがもし手元にひとつもない場合、ぜひこれを機に購入し常備しておきましょう。種類は様々ですが最も普通のタイプのものがあれば十分です。原始的な道具ですが効果絶大です。「ラバーカップの種類とその使い方」でも紹介していますので、併せて参考にしてください。
事前準備
風呂(浴室)はもともと水がはねても問題ない場所のはずなので、養生をする必要は基本的にないはずです。もしユニットバスで、トイレの便座やフタ、もしくはトイレットペーパーのホルダーにカバーをしている場合は取り外しておきましょう。その他濡れたり、汚したくないものがあれば避けておきましょう。
ラバーカップの使い方
ラバーカップはゴムの縁を排水口に密着させることで排水管側に蓋をした状態を作り、その状態を保って押したり引いたりして排水に圧をかけたり吸引したりして使います。
水をためる
ラバーカップがその威力を発揮するためには、ラバーカップのゴムの部分が水につかっている必要があります。隙間を無くすためです。浴室がつまっている場合は、洗い場にわざわざ水をためる必要はほとんどの場合ありません。浴槽の栓を抜いた状態で、浴槽にお湯を流し続けます。するとつまりの具合にもよりますがいずれ排水口から下の排水管は水で満たされ、排水トラップから溢れ始めます。その状態をあえて作り、ラバーカップを使い始めればOKです。
水、空気の逃げ道をふさぐ
ラバーカップを使うとき、つまっている原因箇所から、ラバーカップまでの間に空気や水の逃げ道を作ってはいけません。この点については各家庭の排水管の接続方法によりますので自宅の排水管の接続がどうなっているか確認する必要があります。
例えばユニットバスでは浴室に洗面台が設置されていることがありますが、洗面台の排水が、お風呂側の排水と接続されていることがあります。この場合、洗い場の排水口からラバーカップで圧をかけても、洗面台側に圧が抜けていきます。この場合、ガムテープ等を使ってふさいでももちろんよいですし、雑巾やタオルを濡らして塞ぐべき穴にそれぞれドライバーなどでねじ込んでも効果があります。
しばらく押したり引いたりを繰り返し、つまりが抜けるとスーッと水が引いていきます。2、30分作業して抜けない場合は、一旦水を抜いて薬剤を投入し、放置、またラバーカップ、というサイクルを繰り返しても効果が見込めます。
ワイヤーブラシを使った浴室のつまりの直し方
ワイヤーブラシを浴室のつまりに対して使う場合の使い方、注意点を解説します。
ワイヤーブラシの特徴
ワイヤーブラシは、またの名をワイヤー式パイプクリーナーと言います。ホームセンターなどで入手することができ、数メートルのワイヤーの先にらせん状のヘッドが付いていて、排水管の中に入れてつまりの原因部分を直接刺激します。
プロが使うワイヤートーラーは数十万円し、威力抜群ですがホームセンターの汎用品はあくまで汎用品でそこまで強力ではありません。しかしお湯、薬剤、ラバーカップのどの作業でも、つまりの原因箇所を物理的に刺激することはできません。お湯、薬剤、ラバーカップを使って効果が無かった浴室のつまりが、ワイヤーブラシを使ったら解消した、ということも実際に起こるので試してみる価値はあります。「ワイヤーブラシ(ワイヤー式パイプクリーナー)の種類とその使い方」でも紹介していますので、参考にしてください。
ワイヤーブラシの使い方
市販のワイヤーブラシは、浴室以外ではその威力に物足りなさを感じる道具ではあります。しかし浴室の排水管には思いのほかマッチしてよく効きます。ワイヤーの太さ、排水管やトラップ入り組み方の相性がよいことが多いのだと思います。上手に使いましょう。
ワイヤーを排水口の穴に入れる
固定ねじを緩めてから、手でワイヤーを排水管の中に入れていきます。排水管が入口より先でどのように曲がっているかは物件ごとに異なります。排水管に沿って入っていくように押し入れていきます。ワイヤーのヘッドの感覚を手で確かめながら進めていきます。
ワイヤーを回転させる
ワイヤーの先がつまりの原因に当たっている状態で、クランクハンドルをまわしてワイヤーを回転させます。ワイヤーを数回まわしたら一旦引き抜き、ワイヤーの先端の汚れを拭き取ります。この作業を数回繰り返し、つまりが解消されるか確認します。
ワイヤー式パイプクリーナーが無い場合の代替手段
もしワイヤーブラシが手元に無い場合、代替手段があります。代用するのは、針金ハンガーです。
針金ハンガーを棒状にのばす
まず針金ハンガーをほどいて、1本の棒状にします。その針金の棒を、排水管に入れていきます。針金の棒を両手に持ち、回しながら入れて行くのがコツです。考え方はワイヤーブラシと同様です。排水管が途中で曲がっている可能性がありますので、曲がっている箇所では針金の棒をある程度強い力で中に入れて行く必要があります。また排水管の曲がり方が分かってきたら、針金を少し曲げてみたりしながら奥へ進ませます。何かに当たる感触があればそこでさらに回します。つまりを起こしている箇所に上手く当てることができ、直接圧をかけたりほぐしたりできれば重症のつまりであっても抜けることがあります。
使用上の注意点
既に述べた内容ですが、築古物件の鋳鉄管の場合は注意が必要です。あまり力を入れて針金を操作し、鉄管に力が加わると疲労した鉄管に穴を空けて漏水事故を招きますので注意しましょう。
床にお湯ためてから。トラップに圧力ポンプ突っ込む。浴室から水を流し続ける。浴槽からトラップまでのつまり。洗面台も浴槽も洗い場も全部同じところに流れる。ってことは全部塞がないといけない。濡れたタオルをドライバーでぐいぐい突っ込んでいく。その上で一か所だけに圧力かける。
中鉄管だとやっかい。薬剤入れすぎると穴悪。トーラーもダメ。おっかなくて。築30年超の集合住宅は特にそう。戸建ては基本塩ビ。トラップだけ鉄のこともある。管自体が鉄のこともある。
圧力ポンプ(ローポンプ)を使った浴室排水のつまりの直し方
圧力ポンプ、別名ローポンプを使ってつまりを直す方法を解説します。
圧力ポンプ(ローポンプ)の威力はラバーカップの数倍
圧力ポンプ(ローポンプ)はラバーカップの強力版です。1万~2万円で購入することもできますが、通常はプロの道具という位置づけとなっています。ラバーカップとほぼ同じ手順で使うことができ、威力は数倍です。
ワイヤートーラーを使った浴室排水のつまりの直し方
ワイヤートーラーとは、業務用ワイヤーブラシです。20万円以上しますので、ワイヤートーラーを一般家庭で備えていることはほとんどないでしょう。しかし圧力ポンプ(ローポンプ)まで使って効果が無かった場合、ワイヤートーラーの出番となります。ワイヤーを排水管に差し込んで、詰まりの原因をこそげ落としていく道具です。
ワイヤートーラーを使えば、つまり自体は解消できることが多いです。しかし、つまりを起こすような排水管内に付着、堆積したヘドロや髪の毛などを全てこそげ落とせるわけではありません。したがって、ワイヤートーラーを使ってつまりの解消ができた後に、できれば高圧洗浄機を使って排水管内の洗浄を行いたいところです。
高圧洗浄機を使った浴室排水のつまりの直し方
プロが使う高圧洗浄機は、40~50万円ほどする高価なものです。ホームセンターで売られているような高圧洗浄機とは威力が違います。また、排水管洗浄専用に作られていますので操作性もケタ違いです。
浴室のつまりを解消する、もしくはつまりが抜けた排水管をさらにスムーズに流れるようにするという場合、通常屋外の点検口から高圧洗浄機を入れていきます。逆噴射のノズルがついているため、排水管の中をモグラのように進んでいきます。そして進んだところまでは水の圧力で汚れが吹き飛ばされています。ここまで行えば排水管内の状態はかなり改善されます。
浴室排水詰まりの予防策
風呂(浴室)の排水詰まりの原因のところで記載した通り、浴室の排水管内には汚れと髪の毛が流れ込み、長い年月をかけてカチカチに固まって排水の通り道を徐々に細くしていきます。一般的に取り得る予防策は3通りです。
排水口にヘアキャッチャーを設置する
まずは排水管内に流れ込む髪の毛などを減らすことを考えましょう。新しめの浴室であればもともと排水口にヘアキャッチャーが設置されていますが、築年数が古い建物だと簡単なふたがされているだけでヘアキャッチャーの役割が全くされていないことがあります。その場合は、市販のヘアキャッチャーを設置するだけでも、設置しない場合に比べて大幅に排水管内の環境を改善できます。
排水口の目皿にかぶせる塩ビでできた帽子のようなヘアキャッチャーがあります。サイズもS、M、Lと揃っているものが多く、排水口のサイズに合ったものを選びましょう。塩ビ製なのでもしサイズがうまく合わなくても周囲を切って合わせることもできます。あくまでも目的は髪の毛などを一旦排水口の入り口でせき止めることです。見た目にはあまりこだわらず、効果を優先しましょう。
また、浴槽から排水口の間の排水管内でつまりを起こすケースに備えて、ユニットバスであれば浴槽内でシャワーを浴びたり、浴槽のお湯を抜くときに浴槽内の排水口にかぶせておけば万全です。毎回の設置、取り外しが面倒に感じるかもしれませんが習慣になってしまえばしめたものです。
排水口の目皿に貼っておく使い捨てのシートタイプも販売されています。丸型、四角型があり、排水口の形に合うものを選びましょう。今までそのまま排水口に流れ込んでいた髪の毛が、ごっそりとシートでキャッチされているのを確認できます。切ってサイズを合わせることができて便利です。
排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を定期的に使う
風呂(浴室)の排水詰まりの原因である髪の毛には、塩素系の排水管洗浄剤(パイプクリーナー)が効果的です。詰まりを起こす前に、予防として定期的に排水管に流し込んでいれば、浴室の排水管がつまる確率はかなり下げることができます。
塩素系の排水管洗浄剤(パイプクリーナー)は、次亜塩素酸ナトリウム(カセイソーダ)が主成分で、強いアルカリ性です。とろみのある液体状なので、垂直の排水管内にも管をつたってゆっくり流れていきます。頑固な油汚れやせっけんカス、水あか、髪の毛も溶かすなど、洗浄力は強力です。ただし、排水管内に水がたまっていると洗浄剤の成分が薄められて効果が半減するので注意が必要です。また鋳鉄管(真ちゅうにクロムメッキされている排水パイプ)に使うと腐食することがあり、特に築年数が相当に経過している物件の場合は鋳鉄管に穴をあける可能性もあるため注意が必要です。それと塩素系ですので、酸性の洗浄剤と混ざると塩素ガスを出して大変危険です。使用する洗浄剤のボトルに記載されている注意書きには必ずよく目を通しましょう。
高圧洗浄作業を定期的に行う
費用はかかりますが、高圧洗浄作業を1年に1回でもプロに依頼することは最もつまりの予防効果が高いといえます。プロが使う排水管清掃用の高圧洗浄機は、しっかりとしたものであれば30万円~40万円ほどします。ホームセンターに売っている一般家庭用の高圧洗浄機とは出力や排水管内での操作性が全く異なります。排水口側からではなく、戸建てであれば屋外の点検口からノズルを入れて、逆噴射しながら排水管内を進んでいきます。かなりの水圧で排水管内にこびりついた汚れを吹き飛ばします。高圧洗浄機の威力にかなう予防法は無いでしょう。
もし今までに1度も高圧洗浄作業をプロに依頼した覚えがないということであれば、少なからず排水管内にはヘドロ状の汚れや髪の毛などが大量に堆積しています。その状態から今まで使っていなかった排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を使い始めてマイナスに働くことはありませんが、もし排水管のメンテナンスを本気で考えるのであれば一度高圧洗浄作業を行って排水管内をピカピカにした上で、定期的に排水管洗浄剤(パイプクリーナー)を使うようにすればしばらく浴室の排水がつまることを心配する必要はないでしょう。また、定期メンテナンスを依頼して信頼できる水道業者を見つけておけば、いざというときに相談したり、水漏れやつまりのトラブルが起きたときにも頼りになります。
浴室排水管のつまり除去方法まとめ
風呂(浴室)の排水管のつまりにまつわるトピックを網羅的に解説しました。風呂(浴室)の排水口や、排水口から下水に至るまでの排水管の引き方などが物件ごとにさまざまではあるのですが、一般論として通用するであろう知識をまとめたものです。もしまだトラブルが起きていなければ、今後トラブルを起こさないように排水管にやさしい使い方をし、定期メンテナンスを怠らないようにしましょう。もしトラブルが起きている場合には、ぜひここで解説したつまりを解消する方法を参考に、自力での復旧を試してみてください。みなさまのお役に立てていただければ幸いです。